TWEED / ツイード

ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京、どこの古着屋にも、状態の良いヴィンテージ・ツイードのジャケットが並んでいることこそが、ツイードの耐久力、クオリティーの高さの証。中でも、商業用の手織りのツイードは、世界中を探してもスコットランドのアウター・ヘブリデス諸島で作られる「ハリスツイード」と「ブレニッシュ・ツイード」のみ。手仕事ならではの温もりと風合いこそが、真の豊かさを感じさせてくれる。

ツイードは撚った毛糸で作った織物です。先ずは羊毛を洗浄し、繊維がゆるくほぐれた状態で染色を行い、それからカーディングと言う作業を行います。これは、大きなローラーに数回掛け、繊維が均等に混ざり、同じ方向を向くようにします。次に、ローラーから粗糸(ロービング)として引き出し、繊維に強度を与え、安定化するために引っ張って、ねじります。最後に蒸気で形を整え、糸を緩めます。これで織るための糸となります。

豊かな色や風合いを出すために他の色の糸と撚り合わすこともあります。 またその土地の風景や生き物の色合いが生地のデザインに反映されているのも特徴です。

生地は丈夫で耐久性があり、ジャケットやパンツ、コートなどのアウターウエアに最適です。新しいピュアツイードは、その布の重さの30%までの水分を吸収することができ、濡れても暖かさを保つことができます。

Harris Tweed ハリスツイード

アウターヘブリデス諸島の島民が、熟練された技術と高品質にこだわり、世紀を超えて手織りするハリスツイードは、数多くあるツイードの中でも、「ツイードの王様」と称されるに相応しい威厳と誇りを感じさせてくれる。

スコットランドの北西部に位置するアウターヘブリデス諸島で、染色紡績されたピュア・ヴァージンウールを島民が自宅で手織りした生地は、再び認定されたハリスツイードの工場に戻され、スチームによる風合いの調整やピンセットを使ってのごみの除去などの行程を経て完成されます。最終検品には協会(Harris Tweed Authority)の担当官が立ち会い、合格した生地にのみ専用ラベルが発行され、ハリスツイードとして認定されます。このラベルにはシリアルナンバーが入っており、それを見ればデザインや、担当した工場や職人などの詳細な情報がわかる「布のパスポート」のような仕組みになっています。この徹底した品質管理へのこだわりこそが、ハリスツイードが長く信頼されてきた所以でしょう。

Estate Tweed エステートツイード

フライフィッシングの聖地としても知られるスコットランドの川にはギリーと呼ばれる川の案内人がいる。そのギリー(Gillie)の着るツイードジャケットを見ただけで、川のどのビート(釣場)に所属するギリーかがわかるという。

スコットランドにはエステートツイードと呼ばれるツイードがあります。文字通りエステート(私有地)特有のツイードのことで、その土地の所有者と、そこで働く者にのみ着用を許された特別なデザインは、何世代にも渡って受け継がれています。岩地の多いスコットランド西部ではグレー系のツイード、ライチョウなどの狩猟場となる湿地帯が多い東部では茶系のツイードが好まれることが多いそうです。その土地への思い、そして携わる者、所属する者としての誇りが感じられます。

Photos:  VisitScotland