The Stone of Scone at The Scone Palace garden(スコーン宮殿の庭にあるザ・ストーン・オブ・スコーン) – VisitScotland / Kenny Lam
あまり知られていないアフタヌーンティーとスコットランドのお話
紅茶、スコーン、アフタヌーンティーは英国の代表的な文化の一つです。そのはじまりや普及に重要な役割を果たしたスコットランド人がいたのはご存知でしょうか?一般社団法人 アフタヌーンティー協会の代表理事 橋本陽子さんに、あまり知られていないアフタヌーンティーとスコットランドのお話をうかがいました。
◆ アフタヌーンティーのはじまり
ホテルやティールームでお茶とともに美味しいフィンガーフーズやスイーツ、スコーンを楽しむ優雅な習慣“アフタヌーンティー”が誕生したのは19世紀半ばのイギリス、ヴィクトリア女王の時代です。ロンドンから約1時間北西に行ったところにウーバンアビーという貴族の館があるのですが、そこに住んでいた第7代ベッドフォード公爵夫人、アンナマリアがアフタヌーンティーの習慣を始めたといわれています。昼食と夕食の間にお腹が空いてしまったアンナマリアはある時、召使に自分の部屋にバター付きパンを持ってくるように伝え、午後の紅茶の時間に一緒にいただくようになります。これが最初のアフタヌーンティーのスタイルでした。
◆ スコーンの由来
その後、様々な形で進化してきているアフタヌーンティーですが、現在のアフタヌーンティーの象徴といえば「紅茶」「スコーン」ですが、このスコーンと紅茶、実はその普及に関してはスコットランドが大きく関わっています。つまり、スコットランドなくしては現在のアフタヌーンティーのスタイルはなかったのです。
まず、スコーン。こちらの発祥はまさしくスコットランドです。スコーンの原型は大麦やオートミールをこねて焼いただけのバノックまたはバンノックと呼ばれる発酵させない素朴なクイックブレッドです。そこからベーキングパウダーが開発されて、オーブンの進化により今の形になりました。スコーンという名前は諸説ありますが、スコットランドの古都パースのスコーン宮殿で、王の戴冠式に使われていた椅子の土台に関係するという説が有力です。この椅子の土台は「the Stone of Scone 」と言われ、スコーンの形がこの土台に似ていたそうです。ですので、スコーンの食べ方としては縦に2つに割るのではなく横に2つに割るようにします。これは由来が王座なので形を変える割り方は失礼にあたるとされていたからだと言われております。
◆ 英国紅茶文化へ幕開け
次に紅茶。紅茶の普及に関しては、実は19世紀前半にスコットランド出身の人々が大活躍しております。彼らがいなかったら現在の英国紅茶文化はなかったと言っても過言ではありません。
まずは、植物学者のロバートフォーチュンです。彼はエジンバラ出身の植物学者であり、冒険家で、プラントハンターとも言われていました。彼は中国に住み、植物学者としてのお茶の木の研究を行い、中国から当時イギリスの植民地であったインドにお茶の木を持って行きそこでの栽培にチャレンジした人です。イギリスが中国からお茶を輸入せずに自分たちで育てるきっかけを作った方です。
2人目はスコットランド出身のブルース兄弟。当時中国から移植したお茶の木はダージリン地方以外ではなかなか育たなかったのですが、彼らはインドのアッサム地方において、中国のお茶の木の品種より大きい自生しているお茶の木を発見し育てました。そのアッサム種はインドの気候にあう品種で育てやすく、コクもあることから、イギリス人が好むミルクティーにぴったりなものになりました。
3人目はジェームステーラー。彼はスリランカに行きコーヒー関連の仕事に従事していましたが、ある時さび病でコーヒーが全滅してしまいました。かわりになるものとして彼はインドのアッサム地方のお茶の苗木を手にいれ、育てたところ、とても品質のよいセイロンティーが出来上がり、コーヒーに代わりスリランカはインドと並ぶ紅茶の生産地となったのです。
◆ アフタヌーンティーのマナー
よくアフタヌーンティーの食べる順番とかマナーについて気にされる方がいらっしゃいますが、最近はいただき方に関してはあまり細かいことを気にする必要はありません。むしろ、一番重要なことはティータイムの時間をいかに楽しく優雅に有意義に過ごすかです。つまりその時の会話が大切です。決してその場にいない方の噂話や愚痴などで全ての時間を使わないようにしましょう。また、一人の方のみが話し続けるのもタブーです。参加した方皆さんが楽しめる時間にしていきましょう。
= 橋本陽子さんが代表理事を務める「一般社団法人日英アフタヌーンティー協会」=
現在、日本でも楽しまれているアフタヌーンティーは、19世紀イギリスの貴族社会で生まれ、その後人と人とをつなぐコミュニティーの場として普及していきました。
それから200年後の現在、時空を超え、日本をはじめとするアジア各国で憧れの象徴、交友を深める場、あるいはリラックスの場として愛され続け、その内容もスタイルも進化し続けています。
私たちはその進化し続けるアフタヌーンティーの楽しみ方をイベント、レッスン、認定講座などを通じてご提供しております。
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