スコットランドの歴史
ローマ兵やバイキング、高貴な氏族、巨大な権力を持った君主、そして賢明な哲学者だけでなく、最近では世界を変える発見と革新、画期的な技術、そして信じられないほど進歩的な社会が登場するスコットランドの歴史は波乱万丈で魅力的だ。
スコットランドで、何度も繰り返された侵略が、この土地の文化や社会に大きな影響を与え、並外れた発展と変化の歴史を歩んできた。何千年にもわたるスコットランドの魅力的な歴史の中でも、最も重要な人物や事件の瞬間をタイムラインを使って振り返ってみよう。
スコットランドの誕生
紀元前10000年
旧石器時代
スコットランドに人間が住み始めたのは、石器時代としても知られる旧石器時代からだと考えられています。狩猟採集民は魚や野生動物を狩り、果物、木の実、植物、根や貝を採集して生活をしていました。
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紀元前3000年
新石器時代
スコットランドで発見され現存する先史時代最古の道具は、紀元前3000年に遡ります。新石器時代のスコットランドには、遊牧民の狩猟採集民と、恒久的な住居を建てた最初の農民が住んでいました。この時期の建物の遺跡はユネスコの世界遺産に登録された「ハート・オブ・ニオレティック・オークニー / オークニー諸島の新石器時代遺跡中心地」に残っています。
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紀元124年
ローマ帝国
スコットランドの記録に残っている歴史は、ローマ帝国の襲来から始まりました。北部の国境を守るハドリアヌスの長城と、スコットランドの中央部を横断するアントニンの壁という2つの素晴らしい要塞を建設したにもかかわらず、ローマ人がカレドニア(ブリテン島北部の地域でローマ人が命名。ほぼ現在のスコットランドにあたる地域)を完全に征服することはありませんでした。カレドニア人とピクト人を倒すことができなかったローマ軍は最終的に撤退し、時間の経過と共にブリテン島からも撤退していきました。60キロにわたるアントニンの壁の殆どが現存しており、2004年以来、スコットランドにある6つの世界遺産の1つとして登録されています。
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紀元800年
バイキングの到着
歴史上、この時点では船乗りと考えられたバイキングは、紀元800年頃ノルウェーやデンマークから危険な北海を横断して、貿易や定住の地を求めて移り住んでくるようになりました。バイキングが西部に定住し始めた頃、ピクト人はアルバ王国という新しい王国を築いていました。
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紀元1040年
マクベスがスコットランドを支配
シェイクスピアの架空の説話で永遠に不滅の地位を得たマクベスは、おそらく最も有名な初期のスコットランド王の一人です。マクベス王は1040年から1057年の戦いで亡くなるまで、アルバ王国の王として君臨しました。
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紀元1100年
封建社会の始まり
12世紀、アルバ王国の発展はとどまるところを知らず、封建社会になりました。ウィリアム1世が調印したファレーズ条約は、スコットランドに比較的平和な時代をもたらしました。アレクサンダー2世と3世の即位中には、より多くの土地が農業に転用され、大陸との貿易が経済を支え、修道院が国中に広がり繁栄しました。
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独立への戦い
1297年
スターリング・ブリッジの戦い
アレクサンダー3世の死後、後継者危機がスコットランドに不安をもたらしました。イングランドの君主、エドワード1世は、我こそがスコットランドの支配者に承認されるべきだと信じ、軍隊を引き連れ、いくつもの血まみれの攻城を続け北進しました。1297年、エドワード軍はスターリング橋を渡ってフォース川を越えることを計画しましたが、スコットランド軍は、そこを攻撃する機会に恵まれ、イギリス軍を後退させました。最も有名なスコットランド人の一人であるウィリアム・ウォレスは、この戦いによって、歴史本で永遠に活躍し続ける英雄の座を手にしました。
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1306年
ロバート1世・ドゥ・ブルースがスコットランド王に即位
ロバート1世・ドゥ・ブルースが王に戴冠した後も、ロバート1世の軍がエドワード2世を破り彼の支配の大きな転機にもなったバノックバーンの戦いが1314年まで続いたため、市民の不安は14世紀まで続きました。
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1320年
アーブロース宣言
ラテン語で書かれ、スコットランドの男爵と貴族によって署名された書簡は、教皇ヨハネ22世に送られ、スコットランドの独立主権国家としての地位を宣言しました。その効果はおおむね象徴的なものでしたが、強力な宣言はスコットランドの歴史において重要な文章として位置づけられています。また、多くの歴史家たちには、これが、アメリカ合衆国独立宣言に、アメリカの建国の父と呼ばれる政治的指導者や愛国者の指導者たちに署名をさせたきっかけになったと考えられています。
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王冠の連合
1450年
スコットランドのルネッサンス
ヨーロッパを中心に定着した文化的、知的、芸術的運動はスコットランドに大きな変化をもたらしました; 教育、知的生活、文学、芸術、建築、音楽、政治などはすべて15世紀後半に進歩しました。
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1542年
スコットランドのメアリー王女
リンリスゴ―宮殿で生まれたメアリーはたった6歳の時に、父ジェームズ5世が亡くなり、スコットランドの女王に戴冠しました。メアリー王女の統治は、カトリックとプロテスタントの宗教対立と、「ラフウーイング」として知られるスコットランドとイングランドの戦いの期間の市民の不安によって特徴づけられました。イングランドでは、メアリー王女に対するカトリックの陰謀の可能性を心配し、エリザベス1世はメアリー王女を投獄し、その後約19年の間の監禁した後、1567年にノーザンプトンシャーのフォザリンゲイ城で44歳のメアリー王女を処刑しました。
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1603年
王冠の統合
メアリー王女の第一子ジェームズ6世は、メアリーが退位を余儀なくされてちょうど13か月後に王位を継承しました。イングランド女王のエリザベス1世が子供を持たずに亡くなったとき、ジェームズ6世はイギリスの王位を継承し、ジェームズ6世&1世(スコットランド王としては6世、イングランド王としては1世)となりました。これは現在、王冠の連合として知られている歴史的な動きです。
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1707年
合同法
1707年の合同法により、スコットランド王国とイングランド王国は合併し、グレート・ブリテン連合王国となり、ウェストミンスター宮殿で単一の議会を設立しました。
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1746年
カロデンの戦い
1746年のカロデンの戦いで、ジャコバイト軍は最後をとげ、ブリテン島の戦いの時は終わりました。ジャコバイト軍はハノーバー軍に歯もたたず、わずか1時間で無残にも粉砕されてしまいました。
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1750年~
啓蒙時代
啓蒙時代のスコットランドに住む哲学者のアイデアが、現代の世界を形作りました。知的運動は自然界と人間のマインドの解明を探求し、哲学、化学、地質学、工学、技術、詩、医学、経済学、歴史の分野にも及びました。自然法哲学者のトマス・ホッブスや歴史家でもあり英国の古今最大の哲学者と目されるデビッド、ヒューム、「古典派経済学の父」と称され「道徳感情論」や「国富論」の著者アダム・スミス、スコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズや詩人で小説家でもあるサー・ウォルター・スコットなどの功績は、今日でも称えられています。
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1800年
都市と産業の国、スコットランド
19世紀のはじめ、タバコ、砂糖、綿花の取引によりもたらされた産業の発展と富によって、スコットランドの都市は夜明けをむかえました。農村から都市へ移行し、巨大な町や工場、重工業が定着しました。この頃、鉱業や造船、繊維産業はスコットランドの発展に非常に重要な役割をはたしました。
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20世紀以降
1914年
第一次世界大戦
スコットランド兵は第一次世界大戦で重要な役割を果たし、造船所、製鉄所、鉄鋳物が戦争に不可欠だった為、グラスゴーのクライド側は戦争中の重要拠点となりました。
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1967年
北海油田
最初の北海油井の掘削は、スコットランドに巨大な裾野産業を生み出し、英国が初めて国内で石油を産出できるようになり、当時の主要な産業成果であると考えられました。
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1990年代
世界中に広がるスコットランドの文化
「ブレイブ・ハート」や「トレイン・スポッティング」などの映画は、文化大国としてのスコットランドの確立に大きな役割を果たしました。スコットランドの作家、芸術家、ミュージシャンは新たな成功を手にしました。J.K.ローリングは世界現象にもなった「ハリーポッター」をエジンバラで書き、1997年にはロスリン研究所の科学者が成体細胞から最初の哺乳動物である羊の「ドリー・ザ・シープ」のクローン化に成功しました。
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1999年
スコットランド議会が再招集
権限委譲の要求が数十年にわたってますます高まり、それは1979年の国民投票に現れました。1997年9月の2回目の国民投票では、要求はさらに高まりました。1999年、スコットランド議会は約300年ぶりに再招集され、スコットランド国民は新時代を迎えました。エジンバラのロイヤルマイルの麓にあるスコットランドの国会議事堂は、2004年10月9日に正式にオープンしました。
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2014年
国民投票への道
2012年エジンバラ協定は、スコットランドのアレックス・サーモンド首席大臣と英国のデビッド・キャメロン首相によって調印されました。これによって、スコットランド政府には、両政府公認の投票を実施する権限が与えられ、2014年のスコットランドの独立をかけた国民投票への道が開かれました。2014年9月18日、「スコットランドは独立国であるべきか」という国民投票が行われ、スコットランドの1,617,989人(45%)が「はい」に、2,001,926人(55%)が「いいえ」に投票しました。